備えたい。でも備えられない? ~防災に対する生活者のリアル~
2025.12.12
こんにちは、10 Inc.の北爪です。
年末が近づき、地震や災害のニュースを目にする機会も増えるこの時期 、私たち10INC.はコミュニティメンバーを対象に、防災対策に関する自主調査(MROC)を実施しました 。
テーマは、「防災対策どのくらいやってる?」
「日頃から防災について意識しているか?」「災害にどれくらい不安を感じているか?」といった問いから見えてきた、皆さんの防災意識の実態と、今後求められる備えやサービスについて考察してきます。
【調査概要】
実査機関:自主調査(10 Inc.)
調査手法:オンラインコミュニティ調査(MROC)
対象地域:全国
調査期間:2025年10月1日(水) ~ 2025年10月7日(火)
調査対象者:20歳~69歳の男女・296名(男性111名:女性185名)
※本調査結果を転載される場合は、「10inc調べ- https://10inc.co.jp/」と併記をお願いいたします。
1.被災経験があるからこそ防災意識が生まれている
まず、「災害に対して不安を感じている?」という質問では、73%の人が不安を感じています。そして、「日ごろから防災について意識しているか?」については、約半数の人が「意識している」と回答しました。

防災を意識するようになったきっかけについて、“防災意識がある人(272名)”では、「国内の災害報道(79%)」「防災に関するニュースや記事(56%)」が上位を占めました。
ただし、「自身の被災経験(19%)」「家族や友人の被災経験(16%)」は一見すると、そこまで大きな割合ではありませんが、実数で見てみると227人中、「自身の被災経験が42人」「周囲の被災経験が36人」にのぼり、被災経験は決して他人事ではないという気持ちになります。

2.災害不安の態度で備えたいことが変わる?
実際にどんな災害に不安を感じているのかでは、災害への不安の有無によって大きな違いが見られました。具体的には、“災害に対して不安を感じている人”は「地震」が97%とほぼ全員の方が不安を感じています。
一方で、“災害に対して不安を感じていない人”は、地震よりも「火災」、「水災」、「風災」、「津波」への不安が33%で並ぶ結果となり、不安を感じる/感じない人の違いが見えました。

災害に対する不安態度×防災意識の違いで見ると、日ごろの備えに対しても差があるようです。
“防災意識や災害への不安がある人”が、実際に備えているものは「水や食料の備蓄(86%)」、「懐中電灯・ランタン(82%)」が上位。そして、必要だと思うが実際に準備ができていないものは、「トイレ用品(55%)」があげられており、これは「おすすめの備え」や「あったらいい(便利・助かる)」と思う防災グッズでも同様のキーワードが突出しており、全体的に衣食住と生活インフラの確保を重視していることが分かります。
さらに、「寝具(テント・寝袋など)」は約60%が必要と考えているにもかかわらず、実際に準備している人は23%にとどまり、大きなギャップが見られました。


災害時の備えや防災グッズに関する個々の意見や経験内容から、主に以下の5つの重要なポイントが挙げられています。
1. 飲料水と食料の備蓄:
「飲料水のローリングストック。常に2Lのペットボトルが一定数になるように使いながら、買い足し」
「長期保存が可能な食料品や水などを購入して保管しています。」
2. 防災リュックの重要性:
「防災リュック、一から用意するのは大変なので購入しました。」
「必要なものが全て詰まっている防災キット、これさえあれば個別で準備する必要がないから。」
3. トイレの準備:
「大きな災害が起きるとトイレ問題が大変と聞いたので災害用トイレです。」
「埼玉県さいたま市のふるさと納税で簡易トイレセットを買いました。」
4. 電源確保の重要性:
「現代の生活は電気がないとはじまりません。災害時は情報収集が重要なので、電源確保を優先的に考えたいと思います。」
「ポータブル電源!太陽光パネル付き!電源がとれれば携帯が充電できるので、情報を収集できたり気を紛らわしたり、ご飯が作れたり冷やしたり温めたりなんでもできるので、1番必要だと思って購入しました。」
5. 定期的な見直しと更新:
「防災袋です。定期的に見直したいと思っています。」
「古いものから消費して、常に一定数の新しいものを置いておく。」
一方で、“防災意識や災害への不安がない人”が必要と考え実際に備えているものは、「水や食料の備蓄(48%)」「懐中電灯・ランタン(31%)」「蓄電池・充電器(31%)」です。また、「おすすめの備え」や「あったらいい(便利・助かる)」と思う防災グッズでも同様の傾向が見られ、光や電源の確保を重視する意識があるようです。
しかし、備えの必要性は感じているものの、実際に準備しているものは「特にない」と回答した人が31%である点も特徴的でした。


備えに対する意識・態度の違いは、
「防災意識や災害への不安がある人」:衣食住や生活インフラの確保に重きを置いていることから、災害をより身近に捉えている。
「防災意識や災害への不安がない人」:とにかく情報の取得を重視する傾向です。
3.防災行動や意識への壁は「管理」「費用」「なんとなく大丈夫」
「必要だと思っているのに実際には備えていない理由」を見ると…防災意識や災害へ不安がある人は、「保管場所がない(37%)」「費用がかかる(36%)」「賞味期限や使用期限の管理が面倒(31%)」がTOP3を占めました。必要性を感じながらも準備できていないものは「寝具(テント・寝袋など)」が挙げられていたことからも、保管場所や費用面が大きなハードルになっていることがうかがえます。
一方で、防災意識や災害へ不安がない人は、「何となく大丈夫だと思っている(66%)」と突出してトップ。次いで「過去の災害で困らなかったため必要性を感じない(33%)」を示しました。
この2つの理由は、防災意識や災害へ不安がある人との間で大きな認識ギャップがあることを示しています。

4.私たちが求める「あったらいい」防災アイディア
では、あらためて、今回の調査結果を経て、私たちが必要だと思う備えやサービスについて、考えてみたいと思います。

まず、防災意識や災害への不安がない人は、「あったらいい(便利・助かる)」と思う防災グッズとして、食料・衛生品の管理サービスや地域連携の必要性についての声が挙がりました。
<実際の対象者回答コメント>
「食料品の賞味期限管理が手間なので、定期的に備蓄食料の発送をしてくれるサービス」
「衛生管理が出来るグッズは、どんなものでも便利で助かると感じる。」
「例えば、複数の企業や自治体が協力して、地震や津波の状況の他、停電や避難所の空き状況などが網羅的に把握できるサービスが生まれてほしい」
その他には、「何を備えれば良いか分からないので教えてほしい」というコメントも見られ、備えの必要性は感じている一方で、情報共有の重要性も改めて浮き彫りになりました。
防災意識や災害への不安がある人のご意見を見てみましょう。
<実際の対象者回答コメント>
❏利用者に合わせた防災グッズのカスタマイズ・保管サービスについて
「防災セットをカスタマイズして購入できるサービス。一般的な防災セットは内容が決まっていて既に持ってるものと重複してしまうので…」
「家でストックできる防災用品はスペースが限られているので、緊急性の低いものや替えの分などを預かってくれて、災害発生後、例えば一週間を経過すれば指定場所に届けてくれるサービス。」
「改まって準備をすると何が必要か分からなくなり荷物が多くなりがちなので、シェルターの様な倉庫に預けられるサービスがあると良い。」
❏防災グッズの管理サービス
「もうあるかなとは思うのですが、ローリングストックを選べるプランで定期的に送ってきてくれるサービスがあると楽だなと思います。何も考えなくてもそのセットを持ち出せばいいし、期限や交換時期になったら自動で送られるので把握してなくて良いのがストレスフリーだと感じます。」
「適期的に入れ替えの必要なモノを、訪問交換、補充してもらえるサービスがあれば、利用してもいいかなぁ…」
「備蓄品の管理を楽にするサービス。防災グッズのサブスクや備蓄品管理アプリなど。」
「期限切れが近い非常食をリマインドしてくれるサービス。」
❏防寒グッズ・寝具
「身体を温めるホッカイロの大型(ハーフケット~毛布)が有ると心が温まって『よし!何とかなる!!』って頑張れるので。」
「薄くて軽い保温毛布のような物」
「アルミで加工された毛布。汚れにくいので洗濯ができない環境でも使いやすい」
ここまでのご意見を総合すると、「保管場所」と「管理方法」の課題感が強く、「個々に合わせた防災グッズの選定や保管サービス」「電気の確保」「寝具(防寒)の充実」「携帯電話を継続利用できる環境」が、私たちが安心できる暮らしの“備え”に繋がると感じられました。
また、「東日本大震災のとき、携帯の充電ができず、電波もダメだったので公衆電話の移動サービスのようなものがあればよいと思う。」といった、被災経験者から貴重なご意見もいただきました。
その他、蓄電池、チョコレートや羊羹、笛(ホイッスル)といった、なるほど!コメントもありました。こうしたTipsが、いざというときに役立つことも多いですし、情報共有の大切さをあらためて感じました。
5.調査を通じて見えてきた、理想の防災サービス!
私たちが必要とする“防災”とは何でしょうか?
今回の調査から明らかになった、防災への取り組み状況や課題感、そして「おすすめの備え」や「あると便利・助かるもの」といった皆さんの声を踏まえると、地域と連携しながら発展していくような防災サービスの提供に期待が高まります。
これらの結果から『サブスクリプション型 防災管理アプリ』というアイディアが浮かび上がりました。
ユーザーが以下の2種類の情報を入力することで、一人ひとりに適した避難グッズの提案や、被災時の想定避難方法を提案してくれるサービス。
①本人のライフスタイル情報
性年代、住まい、同居家族やペットの有無、車の保有情報など
②被希望する避難スタイル
避難所への避難、安全な交通網を利用した広域避難、
自宅の庭などを活用した在宅避難など
<主なサービス内容>
・食料品や医薬品など、消費期限のある備蓄品の管理と期限間近のお知らせ
・寝具・テントなど、大型防災用品の保管管理
・避難所情報の提供(混雑状況、配給状況など)
・アプリ内コミュニティを活用した、地域間での通信・情報交換
いかがでしょうか?
「こんなサービスがあったらいいのに…」という視点から、日ごろの備えのヒントをぜひ見つけてみてください。
6.皆さんの日ごろの備えをご紹介
最後に、皆さまがアップロードしてくださった日ごろの備えの写真をご紹介いたします。すべてをご紹介できないのが心苦しいところですが、皆さまの安全を願いながら、今後の防災対策の参考としてご活用いただけますと幸いです。

有事の際は、ご自身の安全を最優先に、ご家族・ご友人、そして地域社会との連携を図りながら、「日ごろの備え」を最大限に生かしていきましょう!
特に“冬の深夜”は被害が拡大しやすいそうです。皆が個々に命を守る備えと行動をしていきましょう。