2025年のトレンド『鬼滅の刃』から分かる、求められる『共感』の大切さ
2025.12.4
こんにちは、10inc.でリサーチャーを担当しているゆーべべです。
今回は、私も大好きなアニメ、鬼滅の刃の人気について弊社運営の消費者オンラインコミュニティtorio caféで調査した結果を紹介します。
鬼滅の刃第一弾『鬼滅の刃 無限列車編』は興行収入ランキング1位になるほどの大ヒットを記録し、続編の『無限城編』も大きな期待をされていました。社会現象とまで言われた『鬼滅の刃』。 多くの人に受け入れられる要因はどこにあったのでしょうか。
調査結果では、やはり「圧倒的な映像美」や「戦闘シーンの作画」を人気の理由として挙げる声が非常に多く見られました。確かに、そのクオリティは熱狂の「入口」として強力です。
しかし、「映像がすごい」作品は他にもある中で、なぜ『鬼滅の刃』は、これほど世代を超えて人気があるのでしょう。
今年のメガヒットコンテンツである『鬼滅の刃』を深堀した結果、現代のコンテンツに「共感」という要素の重要性がみえてきました。
【調査概要】
実査機関:自主調査(10 Inc.)
調査手法:オンラインコミュニティ調査(MROC)
対象地域:全国
調査期間:2025年8月20日(水) ~ 8月26日(火)
調査対象者:20歳~69歳の男女・318名(男性122名:女性196名)
※本調査結果を転載される場合は、「10inc調べ- https://10inc.co.jp/」と併記をお願いいたします。
『鬼滅の刃』のすごさは「心に響く共感」
今回の調査で「映画で一番心に残った場面」や「作品が人気となった理由」を自由回答で尋ねたところ、感情に触れるキーワードがたくさん見つかりました。
(1)「敵(鬼)」なのに感情移入してしまう「切なさ」
“敵なのに悲しい過去も持っているといった新感覚に魅力されて人気が出たと思います。”
“ただ、簡単な善と悪では終わらないキャラクターの背景に共感ができる。”
“人間時代の鬼の悲しい過去や、柱それぞれの抱えている思いや、友情、感動、悲しみ、人としてどう在るべきかなども教えられる様な深いストーリー性があって、アニメでここまで引き込まれるのは鬼滅の刃ならではかなと思いました“
“鬼に殺された人や鬼にならざるをえなかった暗い話をしっかりと描かれていて、深みがある“
『鬼滅の刃』の大きな特徴の一つは、敵である「鬼」が、ただ倒されるだけの「悪」として描かれていない点です。
「映画で心に残った場面」として、主人公たちの活躍シーンと同じくらい、むしろそれ以上に多くの方が挙げていたのが、敵である鬼たちの「人間だった頃」の回想シーンでした。主人公たちだけでなく、辛い過去を持ち、鬼になるしかなかった者たちの「悲しみ」にも深く心を寄せています。
この「単純な悪者では終わらない切なさ」は、より深いコンテンツ消費体験を生み出すと同時に、「物事を決めつけずに受け入れる姿勢の大切さ」や「他者理解の重要性」を感じさせています。
(2)「家族愛」と「師弟愛」という絆
“家族を大切にする人たちの様子が見事に描かれている”
“兄弟姉妹愛や鬼殺隊での師範弟子愛が上手く表現されていて現代社会の愛情不足(ギャップ)を考えさせられる”
“鬼滅の刃の魅力は「絆」だと思います。この「絆」が、コロナ禍で人間関係が希薄となった私に刺さりました。”
物語の原点である「妹を人間に戻す」という家族愛。そして、柱たちから受け継がれていく想いや、仲間との絆。
この、お互いを想い合うキャラクターたちに、人々は「家族や友情の信頼」や「思いやり」の大切さや尊さを感じていました。
(3)「ひたむきさ」で成長を続ける主人公
“炭治郎の芯の強さ。家族を思いやる心。”
“ひたむきに努力を続ける姿が人のこころをつかんだと思う。”
“主人公がゆるがない正義の人で、努力家であり、多くの人がそうでありたいと願う理想の姿だと思う。“
“家族が鬼に殺されて、妹も鬼になっちゃって、鬼になった唯一の妹さえ殺されそうになる。冷静に考えてどん底もどん底だけど、炭治郎は挫けそうになっても何度も何度も立ち上がります。挫けない完全無敵のヒーローじゃない炭治郎だからこそ、みんなが応援したくなったのではないかと思います”
主人公の竈門炭治郎は、最初から特別な力を持ったヒーローではありません。彼は家族を失うという辛い経験から立ち上がり、「努力」と「責任感」で一歩ずつ前に進んでいきます。そんな炭治郎の姿に心を打たれている人が多く見られました。
この「諦めないひたむきさ」が「応援したい」「自分も頑張ろう」という気持ちを生み出しているようです。
(4)今の時代に刺さる「圧倒的な優しさ」
“鬼滅の刃は人に対する思いや、やり取りの奥深さが感じられる“
“炭治郎の優しさを感じられる言葉。「弱いものがまた強くなり、自分より弱いものを守る。」 ”
『鬼滅の刃』が描く「相手の痛みを理解しようとする優しさ」は、日々目にするニュースやSNSなどで、攻撃的な言葉に触れることがある私たちにとって、「安心感」や「理想的な人間関係」を感じさせるものなのではないでしょうか。
まとめ:現代のヒットを読み解く鍵は「共感」
今回のMROC調査で『鬼滅の刃』の「面白さの根幹」を探った結果、改めて一つの示唆が見えてきました。
もちろん、圧倒的な映像美は、多くの人を惹きつける強力なフックでした。
しかし、それ以上に多くの人の心を掴み、熱狂させたのは、鬼滅の刃の物語や登場人物です。

これらはすべて、現代を生きる私たちが無意識に求めている感情や価値観であり、鬼滅の刃の物語やキャラクターたちに深く「共感」しているからこそ、世代を超えた社会現象という熱狂が生まれたと言えるのです。
『鬼滅の刃』の大ヒットは、技術的なクオリティの高さはもちろんのこと、それ以上に、「いかに多くの人の心に寄り添い、共感を呼べるか」が、現代においてコンテンツが広く愛されるための非常に重要な要素であることを、改めて示しているのではないでしょうか。